花屋は個人開業のハードルが低いことから、自宅での開業も検討しやすい業種です。自宅でお花に囲まれてお店ができる、というとても夢のあるお仕事ですよね。
自宅を花屋にする場合、そのまま売ればOKというわけではなく、設備を整えたり準備しておくべきことがいくつかあります。
また、自宅開業ならではのメリットや、デメリットももちろんありますので、失敗しないためには最初によく検討することが大切です。
この記事では、自宅で花屋を開業することのメリット・デメリットをはじめ、開業するために必要なものや費用について解説していきます。
こんな方におすすめ
- 自宅で花屋を開業したい
- 自宅で花屋を開業するメリット・デメリットが知りたい
- 自宅で花屋を開業する際に必要なもの・費用を知りたい
まず初めに「自宅開業が可能か」自治体に確認しよう
花屋の自宅開業を検討し始めたら、まず最初に「そもそも自宅で店舗の開業が可能かどうか」を確認しておく必要があります。
自宅で店舗を開業したいと考えている方の多くは、今お住まいの自宅の一部を店舗として利用するという形を検討されていると思います。
しかし店舗はどこでも好きに開業できるというわけではありません。
お住まいの地域の土地の用途が自治体によって定められていて、住宅専用の地域だと店舗の開業ができないことがあるからです。
住宅用地域の中でも、自宅の一部の限られた面積を店舗にする「店舗兼住宅」が認められていたり、比較的広めの店舗が開業可能とされている場合もあります。
まずお住まいの地域で店舗開業が可能かどうか、事前に自治体(役所)に問い合わせて確認しておきましょう。
また、店舗兼住宅として開業する場合、建物の使用目的を変更することになります。
建物の使用目的が変わると設備などの規定も変わってきますので、こちらも必ずお住まいの自治体への確認と申請が必要になることを覚えておきましょう。
自宅で花屋を開業するメリット
それでは自宅で花屋を開業する場合のメリットについて見ていきましょう。自宅開業の場合、主に費用面・時間面で大きなメリットが出てきます。
1.開業時の物件取得費用をカットできる
自宅開業の最も大きなメリットは、開業費用がかなり抑えられるという点です。
開業費用の中でも高額な店舗物件取得費用(約100~200万円)が丸ごとなくなるため、初期費用をカットしたい場合に最も有効な方法です。
ただし、自宅開業の場合も花屋に適した設備を整える必要があり、リフォーム費用は必ず発生します。
具体的なリフォーム内容については後ほど解説しますが、花の鮮度を保つために適した環境づくりは不可欠です。
そのままの自宅でお花を管理し、売っていくことはまず不可能ですので、注意しておきましょう。
2.車の購入費・維持費を抑えられる
花屋の経営において、車はあると大変便利です。仕入れや配達などを車で行うことも多いので、ほぼ必需品と言っても良いでしょう。
車の種類や家族との兼ね合いもありますが、家の車と店の車を1台に統一すれば、店舗用の車の購入費と維持費が抑えられます。
花屋の車として利用する場合、たくさんの花を運べる大きめの車(ワンボックスカーなど)が望ましいため、兼用を考えていて自宅の車が小型の場合は、買い替えを検討することをおすすめします。
3.時間の使い方の小回りがききやすい
花屋の仕事は多忙ではありますが、どうしても空きの時間が出てくる時はあります。
その時に自宅が店舗だと、空いた時間で家の仕事を片付けたり、家族と過ごす時間を増やすことができます。
また逆に、お店が休みの日に急な注文があった場合に自宅で対応することも可能です。
このように時間の使い方に融通が利くというのは自宅開業ならではの強みです。
自宅で花屋を開業するデメリット
初期費用が抑えられるなど、大きなメリットがある自宅開業ですが、デメリットもいくつかあります。
デメリットも踏まえたうえで先々の経営のことも考え、自宅開業は慎重に検討しましょう。
1.立地によっては集客しづらい
自宅が店舗物件と大きく異なるのは、周辺環境が店舗向けではないため、場合によっては集客が難しいという点です。
店舗物件であれば、駅前や商店街、ビルなど、ある程度店舗向けの周辺環境が整っています。自宅の場合でも、場所が商店街など人通りの多い場所に面している場合は問題はありません。
しかしもし自宅の場所が住宅地となると、自然に人を集めるのは難しいため、店舗物件で開業する以上に広告・宣伝に力を入れていく必要があります。
人通りの少ない場所ならなおさら、チラシのポスティングや看板、ホームページの開設などでまず知ってもらうための入り口を広げていくことを意識しましょう。
場合によってはネットショップを展開するということも視野に入れておくと良いでしょう。
ネットショップの開業手順については、以下の記事でくわしく解説しています。
2.家族・近隣住民に配慮する必要がある
自宅開業において忘れてはいけないのが周囲の人たちへの配慮です。
自宅の一部を店舗にすることになるので、家族と同居している場合はまず家族の理解を得ることが第一です。
さらに、自宅が店になると人の出入りも増えるため、家族以外の近隣住民に迷惑をかけないという点も気にかける必要が出てきます。
周囲の人々の協力が得られないと、経営を続けていくこと自体が困難になってしまいます。具体的な計画を立て始める前に、まず最初に家族に相談することから始めましょう。
家族・近隣住民の理解を得て開業した後も、商品レイアウトや広告などを展開する際は、周囲に邪魔になりすぎないように常に心がけましょう。
花屋に適している部屋の条件とは?
実際に自宅で花屋の開業を検討するにあたって、まず自宅のどのスペースを店舗とするかを考える必要があります。
この時に抑えておきたいポイントは、部屋が「花が生きやすい環境であるかどうか」です。
CHECK!
- 【温度】温度がきちんと管理されている(室内約15~17℃程度)
- 【日光】直射日光が当たらない部屋
- 【広さ】狭くてもOK。フラワーキーパーを置く場合は広い部屋が必要
まずは最も重要な温度について、花にとっての適温をある程度維持できる環境が必要です。
切り花は温度が高いところに置くと水中のバクテリアが繁殖し、花が腐りやすくなってしまいます。
また、直射日光は花が枯れる原因となりますので、窓が多すぎず、直射日光の当たらない部屋の方が適しています。
広さについては、花屋を開業する上でそこまで重要ではありません。
もちろん広い方がお客さんにとっては入りやすく、ゆとりをもって見てもらえますが、販売するなら狭いスペースでも十分です。広さについてはどのようなお店にしたいかを軸に検討しても問題ないでしょう。
ただし、温度管理をする上で便利なフラワーキーパー(大型の花用冷蔵庫)を設置する場合、相応のスペースが必要になってきます。
自宅で花を売るために必要な設備・リフォーム費用
花屋に適した部屋の条件を実現するために、自宅に最低限準備したい設備をご紹介します。
大抵の場合、そのままの自宅で開業するのは難しいと思われますので、ここで紹介する程度のリフォーム費用は開業費用として数えておかれることをおすすめします。
業者に依頼した際の参考費用も目安としてあわせて記載しました。DIYで対応する場合、費用はさらに抑えられます。
1.水道設備(費用:約5万円~)
花の日々のお手入れとして水揚げ・水替えなどが発生するため、水道設備は必須です。
自宅に元々ある水道でも対応は可能ですが、花と水が入ったバケツを持って何度も行き来するのはかなりの重労働になります。
体力・時間を考えても、店舗スペースに水道設備が備わっている方が望ましいでしょう。
作業しやすいように、広めのシンクを準備しておくのがベストです。
2.床材の整備(費用:約8000円~/1㎡)
花のお手入れには水の取り扱いが不可欠なため、床も水を流せる材質に変える必要があります。
主に玄関で使われる土間材(コンクリート、タイル、モルタルなど)がおすすめです。
花屋では花の手入れのために茎や葉をカットすることが多く散らかりやすいので、水で流せる床にしておくことで、流すだけで掃除ができとても便利です。
仕入れ・掃除・手入れ・接客と多忙な花屋の業務において、少しでも掃除の時間を短縮できるようにしておきましょう。
3.温度、日当たりの調整(エアコン・ロールスクリーンなど)
温度・湿度管理のためのエアコンは花屋の必需品です。
もし店舗スペースにしたい部屋にエアコンがない場合は必ず設置しましょう。
また、エアコンの風や直射日光が当たると花が弱ってしまいますので、直接当たらないような間取り・設備も必要になります。
どうしても花を窓の近くに置かなければならない場合、ロールスクリーン(費用:約2万円~)などを設置することで直射日光を防ぐことができます。
自宅開業時に準備しておくもの
ここまで、自宅開業の際に準備しておきたい設備について紹介してきました。
その他に開業時に用意しておきたいものは、店舗物件で開業する場合と同じで下記の通りです。
- 陳列用の什器・バケツなど
- 花用のハサミ、ナイフ
- 作業用スペース、広めの作業台
- ラッピング用品 など
憧れのお店が自宅でも開業しやすいのは、花屋の大きな魅力です。
しかし開業しやすいからこそ、長い目で見た時に経営を続けていけるかを検討することが大切です。最初に周囲ともよく相談して、今後の計画を決めていくようにしましょう。
また、開業までの流れも基本的に店舗開業と同じですので、開業資金や開業手順、仕入れ方法などについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。