「花屋を始めたいけど、開業届などの手続きは必要なの?」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
開業届とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、これから事業を始めますという報告を国に行うための書類です。
あくまで報告であって許可を得るものではないので、極端な話、開業届は提出しなくても違法になったり、罰則があるわけではありません。
しかしこれから事業として花屋を続けていくなら実質ほぼ必須となってきます。また、提出しておくメリットも圧倒的に大きいので、必ず提出しておきましょう。
この記事では、個人事業主として花屋を開業する際に提出しておきたい書類と、提出しておくと便利な書類、各書類の提出期限等について詳しく解説していきます。
こんな方におすすめ
- 花屋の開業時に提出しなければいけない書類が知りたい
- 開業時にやっておいた方が良い手続きを知りたい
- 各書類の提出期限が知りたい
開業届など、花屋の開業時に提出する書類
まず、花屋の事業の立ち上げ時に提出する「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」と、事業内容にかかわらずあわせて提出したい基本的な書類について解説します。
これらの書類は、所轄の税務署で貰えるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
開業届は、原則として事業開始後1か月以内に提出する必要があります。
もし提出が遅れてしまっても特に罰則はありませんが、提出しておかないとできない手続きがいくつかありますので、事業開始時に提出しておきましょう。
開業届の提出が必要になる手続きの代表的なものとして、税金控除が受けられる「青色申告」の申請、屋号付き銀行口座の開設(会社用の口座)が挙げられます。
特に青色申告の節税効果は非常に大きなメリットになります。
屋号付き銀行口座については必須ではありませんが、個人の支出と事業の支出を分けて管理できる点、スタッフに共有しやすい点、信頼感がアップするという点から最初に開設しておいた方が便利でしょう。
また、もし開業時に従業員を雇う予定がある場合は、開業届内の「給与等の支払の状況」に記入する必要があります。
所得税の青色申告承認申請書
青色申告は、一定の基準を満たした帳簿を作成し申請を行うことで、所得税最大65万円が控除されるという制度です。
「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、確定申告の際に「青色申告」ができるようになります。
非常にメリットが大きいので、必ず申請しておきましょう。
書類の提出期限は、業務を開始してから2か月以内です。
後から提出すると出しそびれてしまいかねないので、開業届と同時に提出するのがおすすめです。
なお、青色申告を申請する際は、開業届の中の「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」の項目で「有」にチェックを入れておきましょう。
CHECK!
開業届の提出にデメリットはある?
開業届を提出することによってさまざまなメリットが受けられますが、デメリットとしてはもし開業直前まで会社員として働いていた場合、失業給付が受けられなくなる可能性が考えられます。
失業保険は、失業期間中に転職活動ができるようにサポートしてくれる制度ですので、失業給付を受け取る前に開業届を提出してしまうと、給付金が貰えなくなってしまいます。
また、失業給付を受け取っている間に開業の準備をしている場合も、給付対象外とされてしまうことがあります。
失業保険を受け取りたいならタイミングには十分に注意しましょう。
従業員を雇う場合に必要な手続き
もし開業時点でスタッフを雇う場合は、開業時に必要な書類に加えて以下の書類・手続きが必要になります。
提出期限は、従業員を雇用することになってから1か月以内です。
開業後に従業員を雇用することになった場合も必要になる手続きですので、最初に雇用する予定がなくても覚えておくと良いでしょう。
給与支払事務所等の開設届出書
従業員に給料を支払うことを税務署に伝え、源泉所得税の納付書を受け取るために必要な手続きです。
仮にこの「給与支払事務所等の開設届出書」の提出自体が遅れても、大きな問題はありません。
ただし、提出していない=源泉所得税の納付書が送られて来ないということで、これにより源泉所得税の納付が遅れてしまうと、あとから追尾徴収されるというペナルティがあります。
後から余分なお金を払うことになってしまうのは大きな痛手ですので、なるべく期限内に書類を提出するようにしましょう。
社会保険・雇用保険・労災保険への加入
一定以上の従業員を雇う場合、各種保険への加入が義務として定められています。
これらの保険に関する手続きは、すべて公共職業安定所(ハローワーク)、労働基準監督署、社会保険事務所で行います。
まず、従業員1名以上で「雇用保険」「労災保険」への加入義務が発生します。
労災保険は全ての労働者に対して適用されます。
雇用保険は加入に条件があり、【1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用予定のある従業員である】ことが定められています。
さらに、常時5人以上の従業員がいる場合は、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しなければなりません。
加入しなかった場合、年金機構から資産を差し押さえられたりといったペナルティがあります。何より従業員のためにも必ず加入しましょう。
必須ではないが申請しておくとお得な手続き
開業時に必ず提出する必要はないものの、場合によっては申請しておくとお得になる手続きを紹介します。
後で申請することも可能なため、状況に応じて必要なタイミングで検討しましょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
従業員を雇っていて、なおかつ常時9人以下の場合に、源泉所得税を年2回まとめて納付できるようになる手続きです。
通常、源泉所得税は毎月納付する必要がありますが、人数の少ない企業にとってはこの作業が負担になってきます。
そこでこの負担を減らすため、人数の少ない企業は半年に一回にまとめて納付できる制度が用意されています。
節税などと違い金銭的なメリットはありませんが、多忙な花屋にとって事務作業の短縮は大きなメリットになりますので、スタッフを雇用する場合は申請しておくことをおすすめします。
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
個人事業主が減価償却資産の償却方法を「定率法」にする場合に提出する書類です。
簡単にどのようなメリットがあるか説明すると、開業時に購入した車や設備といった固定資産の節税対策ができる場合があります。
車など長期的に使用する高額な設備は、購入した年に一気に経費として計上してしまうと、正確な利益がわかりにくくなってしまいます。
これらを防ぐために、資産の耐用年数から分割して経費として計上することを「減価償却」と言います。
この「減価償却費」の計上方法を、毎年一定の「定額法」から、最初は高額で徐々に減少していく「定率法」に変更することができます。
定率法を選択した場合、購入直後の利益を下げることができるため、節税対策になると言われています。
ただし、これらはあくまで一例ですので、定額法・定率法のどちらが適しているかはその時の事業の状況に応じて変わってきます。
花屋の開業時には車を購入する場合も多いですが、最初から提出すべきかどうかはよく検討しましょう。
なお、期限としてはその年の確定申告の期限までに提出すればOKですので、よくわからない場合は無理して提出せずに、調べながら様子を見るのも良いでしょう。
業務形態によっては取得必須となる許可証
花屋にカフェを併設したい、雑貨も一緒に取り扱いたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
もし花と一緒にこれらの業務も取り扱う場合、内容に応じて許可が必要になってくる場合があります。
花屋に多い以下の2例について、それぞれ必要な許可について解説します。
カフェなどを併設する場合「食品営業許可証」
花屋にカフェを併設したい場合、飲食業となりますので「食品営業許可証」を取得する必要があります。
食品営業許可証は、所轄の保健所に申請後、実地検査に合格すれば取得することができます。
食品営業許可証の取得には、講習を受講し「食品衛生責任者」の資格を所持しているスタッフを置かなければなりません。
また、申請前に調理設備の確認が必要となります。
開業届などと異なり、事前の用意が必要な資格です。物件が決まり調理設備の検討を始めた段階から、保健所に相談して準備を始めましょう。
なお、飲食業は許可証なしでの営業は禁止されており、もし無許可で営業した場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられてしまいます。許可証は必ず取得しましょう。
アンティークなどの雑貨を取り扱う場合「古物商許可」
アンティーク雑貨をはじめとした中古品を販売したい場合、「古物商許可」を取得する必要がある場合があります。
古物商許可を取得するには、所轄の警察署の生活安全担当課または防犯課に、申請書・住民票などの数種類の書類を提出する必要があります。
古物商免許を取得するためには、古物を保管しておく場所が必要になりますので、物件を決めた後に申請するのが良いでしょう。
その他の取得条件は特に難しくはないので、物件が決まっていて常駐するスタッフがいる場合はおおむね問題なく取得できるでしょう。
自ら海外で買ったものを売る場合には免許は不要など、いくつか対象外となる場合もあります。自分が販売したいものと照らし合わせて、許可が必要かどうかを確認しておきましょう。
古物許可証を取得せずに営業した場合、懲役3年以下または100万円以下の罰金が科される場合がありますので、取扱商品が該当する場合は必ず取得しましょう。
花屋の出店に必要な開業届 まとめ
開業届と、開業届と一緒に提出する書類についてまとめて解説してきました。
これらの書類の中でも、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」「所得税の青色申告承認申請書」はまとめて最初に提出するのがおすすめです。
その他の書類は花屋の開業時の状況や、展開したい業務内容によって必要な手続きは異なります。
また、もし開業時点で必要なくても後になって役に立つ場合もあります。
どのようにお店を経営していきたいかにあわせて、その時その時で検討していきましょう。