胡蝶蘭を育てていると、お花の形などでお気に入りの胡蝶蘭ができたりしますよね。
そんな時に「胡蝶蘭って増やせないの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
胡蝶蘭は株分けや胴切りを行うことで増やすことが可能です。
一般的に胡蝶蘭の増やし方には以下の3つがあげられます。
- 親株と子株を株分けする
- 高芽から株分けする
- 胴切りで増やす
この記事では、胡蝶蘭の増やし方について詳しく解説していきます。
やり方を間違うと新しい株が枯れてしまう恐れがあるため、株分けや胴切りをしても良い株の見極め方、増やした後の管理方法も一緒に紹介します。
この記事を読むと分かること
- 胡蝶蘭は株分けと胴切りで増やせる
- 胡蝶蘭を増やすなら高芽を育てる方法がおすすめ
- 胡蝶蘭を増やした後の注意点
胡蝶蘭は種からの発芽が難しい
胡蝶蘭は発芽させるのが非常に難しく、一般家庭では種から育てても増やすことができません。
また、花から種を収穫できることも稀で、花で挿し木を行っても育てることは不可能です。
上記のような理由から、胡蝶蘭を増やす際は1つの株から株分けする方法が一般的です。
ご家庭でも条件が揃えば株分けや胴切りを行って胡蝶蘭を増やすことができます。
ここからは、実際の増やし方について解説していきます。
胡蝶蘭の増やし方は主に3種類
胡蝶蘭の主な増やし方は、以下の3種類です。
- 親株と子株を株分けする
- 高芽から株分けする
- 胴切りで増やす
胡蝶蘭に子株や高芽が出ている、胴切りできるかによって行える方法が変わってきます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
親株と子株を株分けする
胡蝶蘭は親株と子株に分かれている場合に、株分けをして増やすことができます。
子株とは、親株の根元や茎の節から生えた小さな株のことで、根と葉を持っています。
現在、子株が出る条件ははっきりしていません。
しかし、親株が弱った時に生き残るために子株を出したり、逆に親株が十分栄養を蓄えていた時に一部を子株に与えてより多くの個体を残そうとしたなどの説があります。
高芽から株分けする
胡蝶蘭の株分けの2つ目の方法として、高芽から株分けする方法があります。
高芽とは、本来花が咲くはずの花茎の節から芽が出て葉や根が生えた状態のことを指します。
高芽であれば先に葉が出ることが多く、根がしっかり伸びるまで生長したら株分けが行えます。
根、または葉が生えていない時に株分けすると枯れてしまうため、株分けできるまで育てることが必要です。
胴切りで増やす
胴切りとは、胡蝶蘭の伸びた茎を途中で切って2つに分ける方法です。
胴切りは茎を切るため、子株や高芽が出ない株でも試せる増やし方になります。
胡蝶蘭の葉は上から生え、寿命を迎えると下から落ちていくため年月が経つと茎部分が伸びていきます。
また、根は葉の付け根から生えるため、健康に育った胡蝶蘭は茎から健康な根が多数生えていることが多いです。
そのため、胴切りで切り分けても元気な胡蝶蘭を育てることができます。
胴切りをする場合は、茎が伸び、複数の葉と根を持つ胡蝶蘭で行うのが理想的です。
胡蝶蘭の株分けの仕方
株分けを成功させるためには、まずは胡蝶蘭が株分けできる状態かを確認する必要があります。
胡蝶蘭が株分けできる状態であることが確認できたら、適した方で株分けを行います。
ここでは以下の項目について解説します。
- 株分けができる状態かを確認する
- 株分けに適した時期
- 親株と子株を株分けする手順
- 高芽から株分けする手順
株分けができる状態かを確認する
まずは株分けしても大丈夫な状態まで子株や高芽が育っているかを確認しましょう。
株分けができる状態は以下のとおりです。
- 子株・高芽に2~3枚の葉が生えている
- 健康な根が2~3本ある
葉や根が生長していないうちに親株と切り分けてしまうと、子株が生長できずに枯れてしまう恐れがあります。
株分けできる状態になるまで1年以上かかる場合もありますが焦らずに育てましょう。
株分けに適した時期
株分けは、植え替えと同様に花が咲き終わった5月~7月頃に行います。
胡蝶蘭は2~3年に1度、植え替えをするのが良いとされています。
同時に行えるのであれば、株分けと植え替えを一緒に行いましょう。
暖かい時期に株分けが行えれば、親株・子株ともに負担を少なく出来ますよ。
胡蝶蘭の詳しい植え替え時期や植え替えの判断ポイントは「胡蝶蘭の植え替え時期はいつ?見分け方と判断ポイントを徹底解説」で詳しく解説しています。
親株と子株を株分けする手順
親株と子株を株分けする手順は、以下のとおりです。
- 胡蝶蘭を鉢から取り出す
- 古い植え込み材を取り除く
- 傷んでいる根がある場合は切り落す
- 根を落とさないに、子株を切り離す
- 親株・子株をそれぞれ新しい植え込み材で包む
- 親株と子株を別の鉢に入れて、植え込み材で隙間を埋める
親株と子株を切り離す際は、消毒したハサミやカッターを用います。
なるべく根を傷つけないように慎重に行いましょう。
胡蝶蘭の植え替え方法は以下の記事で解説しています。
念のため、やり方を確認しておきましょう。
【失敗しない胡蝶蘭の植え替え】時期・方法・注意点|プロが教える成功の秘訣
高芽から株分けする手順
高芽を株分けする場合、根が5㎝以上になっていることを確認しましょう。
高芽から株分けする手順は、以下のとおりです。
- 花茎を3~5cmほど残して、高芽を切り離す
- 高芽を植え込み材で包む
- 高芽を鉢に入れて、植え込み材で隙間を埋める
高芽を切る際は、3~5cm残すようにします。
高芽を育てる鉢は、大きいサイズだと根腐れになるおそれがあるので、小さめのものを利用しましょう。
胡蝶蘭の胴切りの仕方
胴切りで胡蝶蘭を増やす場合も、胴切りに適した株であるかどうかをあらかじめ確認する必要があります。
ここでは、胴切りに適した胡蝶蘭の見分け方と詳しい手順について見ていきましょう。
胴切りに適した胡蝶蘭は?
胴切りに適した胡蝶蘭には、以下のような特徴があります。
- 子株や高芽が出てこない胡蝶蘭
- 茎が伸びた胡蝶蘭
胴切りは胡蝶蘭の茎を切る方法なので、子株や高芽がなくても胡蝶蘭を増やすことができます。
胡蝶蘭を増やしたいけれど、子株や高芽がなかなか出てこないという場合は、胴切りを試してみてはいかがでしょうか?
また茎が伸びすぎた胡蝶蘭も、胴切りに適しています。
胴切りすることで、見た目もキレイになりますよ。
胴切りの手順
胡蝶蘭の胴切りの手順は、以下のとおりです。
- 胡蝶蘭を鉢から取り出す
- 根に付いている古い植え込み材を取り除く
- 傷んでいる根がある場合は切り落す
- 子株や芽が出ているところを探す
- 茎のどの位置で切り分けるのか決める
- ハサミなど使って、切りたい位置で茎を切り落す
- 茎の切り口に殺菌剤を塗る
- 切り分けた株の両方を新しい植え込み材で包む
- それぞれの株を鉢に入れて、隙間を植え込み材で埋める
茎を切る場所は、株の状態を見て判断しましょう。
胴切りをする際は葉がある上の株にしっかり根を残すことが重要です。
根元近くで切ると、上の株の方に残る根が少なくなるため株が枯れてしまう恐れがあります。
また、生長しなかった新芽が残っている場合はなるべく下の株側に残すようにしましょう。
下の株は根だけになるため、なるべく早く芽が出てくる切り方が理想です。
胡蝶蘭を増やすなら高芽を育てるのがおすすめ
胡蝶蘭をより確実に増やしたいなら、花茎から高芽が出るように育てるのがおすすめです。
子株や高芽ができる条件ははっきりしていないため「胡蝶蘭を増やしたい」と思っても条件を揃えるのが難しいのが難点です。
また、胴切りは健康な根が多くないと失敗しやすく、健康に育った古い株が適しているため用意するのが大変です。
それに比べて、花茎から高芽が出るように育てる方法であれば毎年挑戦することができます。
ただし、高芽を育てるのも時間がかかるため気長に取り組みましょう。
花茎から高芽を出す方法
胡蝶蘭の花茎から高芽を出す方法は、以下の2通りがあります。
- 花茎の節の薄皮を剥いて薬剤を塗布する
- 健康な花茎を切って育てる
花茎の節には芽があるため、薄皮を剥いて芽が育ちやすくします。
薄皮を剥いた芽に植物成長調整剤などを塗布することで高芽の生長を促せます。
それぞれの方法について詳しく解説していきます。
花茎の節の薄皮を剥いて薬剤を塗布する
高芽を育てる最も簡単な方法は花茎の節の薄皮を剥いて薬剤を塗布する方法です。
花が咲いた頃に行う方法で、胡蝶蘭を育てながら高芽を育てられるため特別な道具を用意する必要がありません。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 胡蝶蘭の健康な花茎を選ぶ
- ふっくらとした節の薄皮を剥く
- 植物成長調整剤(BA液剤など)をコットンなどに浸す
- 節の部分をコットンで包む
- 薬剤が切れないように定期的にコットンを変える
コットンがなければ、乳液などを薬剤に練りこんで塗布しても構いません。
節から葉芽を出したい場合は、25℃以上で管理することを心がけましょう。
管理する気温が18℃程度だと花芽が出る可能性が高くなります。
また、BA液剤(ベンジルアミノプリン液剤)が手元にない場合はバナナの皮やニンニク水でも代用できますよ。
ニンニク水の作り方は「胡蝶蘭にニンニク水!?驚きの効果と正しい使い方」で解説しています。
健康な花茎を切って育てる
高芽を育てる方法には花茎を切って培養する方法もあります。
ほぼ確実に株の芽が出るため、腐ったり枯れなければ成功確率が高いのが特徴です。
具体的な手順は以下のとおりです。
節を残して健康な花茎を切る
まずは胡蝶蘭の花茎を切ります。
青々とした健康な花茎の中から、ふっくらとした節を選びます。
節の前後2~3cmを残して花茎を切りましょう。青々とした花茎なら開花後でも構いませんが、開花前の栄養を蓄えた花茎を使った方が成功確率が高くなります。
花茎の切り口を両方塞ぐ
花茎の切り口から水分が蒸散するのを防ぐために断面を塞いでおきましょう。
切り口を塞ぐ際は、以下のいずれかを用いるといいでしょう。- ロウソク
- トップジンMペースト
節の部分の薄皮を剥く
節の薄皮を剥いて中の芽が見えるようにしましょう。
ピンセットなどを用いて芽を傷つけないように作業を行いましょう。ニンニク水を作る
次にニンニク水を用意します。
1リットル程度のニンニク水が必要ため、以下の手順で用意しましょう。- ニンニク2欠片を刻む
- 常温の水を1リットル注ぐ
- 4時間~1晩程度置く
- ガーゼや茶漉しでニンニク水を濾して液体のみにする
花茎をニンニク水に20分程度沈める
花茎が全て入る容器を用意します。
ニンニク水を入れた容器に花茎を沈めて20分程度待ちます。細長い容器を用意し、花茎が全てニンニク水に浸かるようにしましょう。
植え込み材にニンニク水を染み込ませる
花茎を浸けている間に、水苔もニンニク水に浸しておきましょう。
ニンニク水の中に乾いた水苔を入れ、20分経つまで待ちましょう。花茎が入るパック容器を用意する
花茎が入る容器を用意します。
花茎を入れる容器は、密閉できるものであれば市販のプラスチック容器などで構いません。底に水苔を敷き詰める
ニンニク水に浸していた水苔を絞って余分な水分を抜きます。
プラスチック容器の底に水苔を敷きましょう。
芽を上にして置き、蓋を閉めて密閉する
ニンニク水に沈めていた花茎を取り出し、芽を上にしてプラスチック容器の上に置きます。
芽を下にして置かないように注意しましょう。水苔の上に花茎を置いたら、プラスチック容器の蓋を閉めて密閉します。
花茎を入れた容器は、18~25℃程度の明るい日陰で管理しましょう。
芽が生長していれば3か月もすれば葉が出てきますよ。
胡蝶蘭を増やした後の注意点
胡蝶蘭を株分けや胴切りで増やした直後は株が弱くなりやすいため、特に管理方法に気を遣う方法があります。
いつもと同じように育ててしまうと、せっかく胡蝶蘭を増やしたのにすぐに枯れてしまう可能性が高まります。
胡蝶蘭を増やした後は、以下のポイントに注意しましょう。
- 2週間程度は水やりをしない
- 風通しの良い日陰に置く
- 落ち着くまで植え替えをしない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2週間程度は水やりをしない
株分けや胴切りを行った後の胡蝶蘭は、元々あった株も増やした株も非常に弱っている状態です。
水やりは2週間程度ストップしましょう。
もし胡蝶蘭が乾燥しているようであれば、葉の中央に水が溜まらないように注意して、霧吹きを使って葉水を行います。
株分けや胴切り後、2週間ほど経過した後に、植え込み材が乾いて、株が元気そうなら水やりを通常通りに再開します。
風通しの良い日陰に置く
株分けや胴切りを行った後の胡蝶蘭は、直射日光が当たらない風通しの良い日陰に置きます。
環境に慣れるまでは成長が止まるので、あまり置き場所を移動させずに、そっとしておくのが重要です。
胡蝶蘭に与える負担が少ないほど、新しい環境に早く馴染んで元気に育ってくれます。
落ち着くまで植え替えをしない
株分けや胴切りと同時に植え替えをしなかった場合は、落ち着くまでは植え替えをしないでください。
株分けや胴切りを行うと、胡蝶蘭は急激な環境変化に大きな負担がかかっています。
最低でも1~2ヵ月は株を休ませてあげて、落ち着いてから行いましょう。
株分け・胴切り後は葉で健康状態を確認する
胡蝶蘭の健康状態は、葉に現れることが多いです。
胡蝶蘭の葉の健康な状態は、深い緑色でツヤやハリがあり、葉が上に向いています。
葉がそれ以外の状態になっている場合は、胡蝶蘭に何かしらの異常が発生しているかもしれません。
胡蝶蘭の葉っぱに現れる主な症状としては、以下のようなものがあります。
葉が黄色くなった | 寿命なので、様子をして大丈夫 |
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葉が白または黒くなった | 直射日光と葉っが原因で蒸散しています |
葉に白または黒い斑点があり、ツヤがなくなった | 害虫による被害を受けている |
葉が黄色くなり、茎が黒くなった | 何かしらの病気にかかっている疑いがある |
胡蝶蘭に元気がない時の原因や対処法は「胡蝶蘭の元気がない!原因別対処法と復活させるコツ【プロ監修】」でも詳しく解説しています。
葉が黄色くなった場合:寿命
胡蝶蘭の葉が黄色くなる主な原因としては、葉の寿命が考えられます。
葉が寿命で黄色く変色した場合の主な症状は、以下のとおりです。
症状 |
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対処法 |
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寿命になった葉はそのうち自然に落ちるので、そのまま放置していても問題ありません。
葉が白または黒くなった場合:葉焼け
胡蝶蘭の葉が焦げたように変色した場合、直射日光によって「葉焼け」を起こしている可能性が考えられます。
葉焼けを起こした場合に起こる主な葉の症状は、以下のとおりです。
症状 |
|
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対処法 |
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葉が日焼けを起こして変色した場合、そのままにしておくと広がってしまいます。
発見したら早めに患部を切り取り、それ以上広がらないように対処しましょう。
葉全体が変色してしまっている場合は、葉が枯れて落ちるまで待ちます。
また葉焼けを起こしてしまった場合は、すぐに胡蝶蘭を直射日光が当たらない場所に移動させましょう。
葉焼けした部分を対処しても、同じ場所では再び葉焼けを起こしてしまうことになります。
葉が黄色くなり、茎が赤黒くなった場合:病気
葉が黄色くなり、茎が赤黒くなった場合は、何かしらの病気になっていると考えられます。
胡蝶蘭がかかりやすい病気や症状は、以下のとおりです。
病気名 | 症状 |
---|---|
炭そ病 |
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軟腐病 |
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褐斑軟腐病 |
|
フザリウム立枯病 |
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葉に白または黒い斑点があり、ツヤがなくなった場合:害虫
葉に白い斑点があり、ツヤがなくなった場合は、害虫の被害を受けている可能性が高いです。
胡蝶蘭に寄生する主な害虫や葉に与える影響は、以下のとおりです。
害虫名 | 症状 | 有効な薬剤 |
---|---|---|
ハダニ |
|
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カイガラムシ |
|
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害虫によって葉が変色した場合は、見つけ次第すぐに対処を行いましょう。
それぞれ害虫によって効果の高い殺虫剤は異なるので、発生した害虫によって使い分けることが大切です。
ハダニやカイガラムシ以外の胡蝶蘭に寄生する害虫については以下の記事を参考にしてくださいね。
胡蝶蘭に寄生した害虫を駆除する方法は?被害を受けないための対策方法も解説
まとめ
胡蝶蘭は種から発芽することが非常に難しいため、1つの株を分けて増やす方法が主流です。
胡蝶蘭の増やし方は、主に以下の3通りがあります。
親株と子株を株分けする | 親株の根元や茎の節から小さな株が生えた時に行う方法 |
---|---|
高芽から株分けする | 高芽から葉と根が伸びた場合に行う方法 |
胴切りで増やす | 茎を切って2つに分ける方法 |
しかし、胡蝶蘭が子株や高芽を作る条件はまだ解明されておらずはっきりとは分かりません。
胡蝶蘭をより確実に増やしたいのであれば、花茎の節から高芽が出るように育ててから株分けするのがおすすめです。
子株や高芽は、生長しないうちに株分けしてしまうと枯れてしまう恐れがあります。
葉と根が生えて1つの株として切り離しても大丈夫になるまでしっかり育てましょう。
また、胡蝶蘭を増やすためには株分けのタイミングや、株を増やした後の管理方法も重要です。
胡蝶蘭にできるだけ負担をかけないように管理して、元気な胡蝶蘭を増やしましょう。