コルク付けは、植え込み材の代わりにコルク板に胡蝶蘭を固定し、根を空気に触れさせて育てる方法です。
原産地の生育環境を再現できることに加え、コルクの質感がインテリアとしても楽しめる栽培方法です。
根腐れしにくく、気根が生長している姿が見られるため胡蝶蘭を育てている方に好まれています。
しかし、コルク付けは初心者の方には植え替え難易度が高めで、お世話の手間がかかるため上手くいかない場合もあります。
この記事では、胡蝶蘭のコルク付けについて解説していきます。
メリット・デメリットの他に、コルク付けが向いているケースや、コルク付けの手順なども詳しく解説していきます。
この記事を読むと分かること
- 胡蝶蘭をコルク付けするメリットとデメリット
- コルク付けに向いている環境や胡蝶蘭
- コルク付けのやり方や準備する道具
胡蝶蘭をコルク付けするメリット・デメリット
胡蝶蘭をコルク付けする栽培方法には、メリットとデメリットの両方があります。
まずはコルク付け栽培の特徴を確認しておきましょう。
メリット
胡蝶蘭をコルク付けするメリットは以下のとおりです。
- 水やりのタイミングが一番わかりやすい
- 根腐れしにくい
- 底冷えを防ぎやすい
- 根の生長が見える
コルク付けは、根と植え込み材を直接確認できるため水やりタイミングが一番わかりやすい育て方です。
また、根と植え込み材が空気に触れているためほとんど根腐れが起こりません。
コルクを吊るすのであれば、暖かい空気に触れやすくなるため温度管理がしやすく底冷えしにくい点もメリットです。
根がぐんぐん生長している姿も見られるのも、胡蝶蘭が好きな方にとっては嬉しいポイントですね。
デメリット
胡蝶蘭をコルク付けするデメリットは以下のとおりです。
- 植え替えの難易度が高い
- 水やりが大変
- 根の活着に時間がかかる
- 植え方を変えにくい
コルク付けは、初心者の方にとっては植え替えの難易度が高めです。
株元や根をコルクに固定するため、株を傷つけないように作業を行わなければいけません。
また、コルク付けは乾燥するため水やり頻度が多くなります。
流し台やお風呂まで胡蝶蘭を運ぶ回数が増え、水切りの時間も必要ですので水やりが大変になります。
加えて、根がコルクに活着するまで時間がかかるため、糸の老化に伴う落下などにも気を付けましょう。
根がしっかり活着した後は、植え方を変えにくい点もデメリットです。
コルクから根を剥がさなければならず、伸びすぎた根を整理しないと鉢に収まらない可能性があります。
コルク付けに向いている環境や胡蝶蘭
胡蝶蘭のコルク付けは向き不向きがあり、お世話の仕方、置き場所や胡蝶蘭自体の状態によって変わります。
コルク付けに向いているケースと、コルク付けが向いていないケースについてそれぞれ以下の視点で見ていきましょう。
- 胡蝶蘭の状態
- 置き場所や環境
- お世話の仕方
胡蝶蘭の状態
コルク付けに向いている胡蝶蘭と、向いていない胡蝶蘭は以下のとおりです。
向いている | 向いていない |
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コルク付けの作業は、胡蝶蘭にとって非常にストレスがかかります。
環境の変化に適応しやすい株がいいため、花が終わった健康な胡蝶蘭が向いています。
また、コルク付けは株元と根を固定するため、長い根が少ないと株がグラグラして落下するリスクがあります。
コルク付けは乾きやすいため、根が少ないと水不足になりやすい点も不向きと言えます。
置き場所や環境
胡蝶蘭をコルク付けして育てるのに向いている環境と、向いていない環境は以下のとおりです。
向いている | 向いていない |
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コルク付けで胡蝶蘭を育てる際は湿度の維持が重要です。
乾燥しがちな環境では失敗しやすいため、注意しましょう。
また、直射日光や温度変化が激しい場所もコルク付けに向きません。
お世話の仕方
胡蝶蘭をコルク付けして育てるのが向いている方と向いていない方はそれぞれ以下のとおりです。
向いている | 向いていない |
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コルク付けした胡蝶蘭は、忙しくて頻繁に水やりができない方には向かない栽培方法です。
また、コルクに根が活着するまでは時間がかかり、植えてみてから「思ったより乾くのが早い」などの理由で水苔の調整などが必要な場合があります。
小まめなお世話や、細かい作業が苦手な方にも合わない育て方かもしれません。
胡蝶蘭をコルク付けする方法
ここでは、胡蝶蘭をコルク付けする方法について解説していきます。
コルク付けに必要な以下について確認していきましょう。
- コルク付けに最適な時期
- 準備する道具
- 胡蝶蘭をコルク付けする手順
コルク付けに最適な時期
胡蝶蘭のコルク付けは、だいたい4月~6月頃が最適です。
一般的な植え替え時期と同じで株が生長を始める暖かい時期に行うようにしましょう。
春ごろに植え替える場合は以下の2点を確認しましょう。
- 胡蝶蘭の花が咲き終わっているか?
- 日中の最低気温が15℃以上あるか?
植え替え時期については「胡蝶蘭の植え替え時期はいつ?見分け方と判断ポイントを徹底解説」で詳しく解説しています。
準備する道具
コルク付けを行う際に準備する道具は以下のとおりです。
- 胡蝶蘭
- コルク
- 水苔
- 糸(結束バンド、ワイヤー、テグスなど)
- ハサミ(カッター)
水苔がなくてもコルク付けはできますが、乾燥や水不足防止のために水苔を用いた方が安心です。
胡蝶蘭をコルク付けする手順
胡蝶蘭をコルク付けする際の手順は以下のとおりです。
- コルクのどこに胡蝶蘭を付けるか決める
- 鉢から胡蝶蘭を出して植え込み材を取り除く
- 枯れた根を剪定する
- コルクに水苔を軽く載せる
- 水苔の上に胡蝶蘭を置く
- 株が落ちないように固定する
- 株がグラグラしないか確認する
それぞれの工程について、詳しく見ていきましょう。
コルクのどこに胡蝶蘭を付けるか決める
まずは、胡蝶蘭をコルクのどこに付けるかを決めましょう。
コルク付けの場合は必ずしもコルクの真ん中に胡蝶蘭を付ける必要がありません。
コルクの形状、コルク付けした胡蝶蘭をどう飾るかや、水やりの方法などによって最適な場所は異なります。
胡蝶蘭の向きは、上向きでも下向きでもどちらでも構いません。
ただし、胡蝶蘭の葉が日光の方を向いて開いている場合があります。
明確に葉が開いている向きがあった際は、その逆側にコルクを設置しましょう。
生長して葉が増えると茎が伸び、株元に生える根とコルクが離れていく可能性があります。
コルクと新しい根の距離が遠いと、根が活着しにくくなって水分が吸えなくなってしまいます。
鉢から胡蝶蘭を出して植え込み材を取り除く
コルク付けの場所を決めたら、胡蝶蘭を株から出して植え込み材を取り除きます。
鉢の中からそっと取り出して、古い植え込み材を取り除いていきます。
水苔の場合は根に絡んでいるものを取り除いてから軽く水で洗い流しましょう。
枯れた根を剪定する
寿命を終えた根、枯れた根を切り取っていきます。
切り取る根の特徴は以下のとおりです。
- しわしわ、かさかさになった根
- 黒茶色になって萎れた根
ふっくらとして弾力がある根、白っぽい緑色で厚みがある根は健康な根ですので、切らないようにしましょう。
根を切る際は、消毒したハサミやカッターを使うようにしてくださいね。
コルクに水苔を軽く載せる
ここからは、コルクに胡蝶蘭を付けていきます。
最初にコルクの上に水苔を軽く載せておきます。
水苔の量は胡蝶蘭の株元を置ける程度で構いません。
先に水苔を置いて、その上に胡蝶蘭を付けていく方が初心者の方はやりやすいと思いますよ。
水苔の上に胡蝶蘭を置く
水苔の上に胡蝶蘭を置き、株元や根の位置を調節していきます。
胡蝶蘭の株元がコルクに近い方が株が安定しやすくなります。
根が水苔に触れている方が水不足になりにくくなるため、必要に応じて根とコルクの隙間に水苔を足していきましょう。
胡蝶蘭を置く際に「水苔がばらけて安定しない」とやり辛さを感じる場合は、水苔を仮置きした際に糸で軽く固定しておくといいですよ。
株が落ちないように固定する
胡蝶蘭の位置が決まったら、胡蝶蘭を固定します。
胡蝶蘭の株がグラグラ動いていると根が活着しづらくなるため、株元はしっかりとコルクに留めましょう。
留め方は、テグスやワイヤー、糸などで結ぶ方法が一般的です。
株元をより安定させたい方、電動ドリルなどの道具をお持ちの方はコルクに穴をあけて針金や結束バンドを用いるとなお安心です。
胡蝶蘭の根は、きつく締めすぎると痛めてしまう恐れがあるため、全体を留める程度にしましょう。
コルクから離れて空中をふらふらしている根がなくなれば大丈夫です。
株がグラグラしないか確認する
最後に、コルクを軽く揺らして胡蝶蘭の株がグラグラしていないか確認してみましょう。
株がぐらついていたり、落ちそうな場合は胡蝶蘭の留め方を見直してみましょう。
コルク付けした胡蝶蘭のお手入れ方法
コルク付けした胡蝶蘭の以下のお手入れ方法を解説します。
- 水やり方法
- 肥料の与え方
特に水やり方法は、鉢植えの時と違う場合もあるため確認しておきましょう。
水やり方法
コルク付けした胡蝶蘭への水やりは、根や水苔が乾いてから水を与えます。
大体は水苔を使っていると思いますので、水苔が乾いたらたっぷり水を与えましょう。
コルク付けした胡蝶蘭の水やり方法は、主に以下の2通りになります。
- バケツなどに10分ほど沈める
- 如雨露やシャワーで水をかける
胡蝶蘭をお風呂場やキッチンに運んで水をかけるか、バケツなどの容器にコルクごと沈めて水をやります。
室内に胡蝶蘭を置いている場合は水が切れるまで待ってから元の場所に戻しましょう。
肥料の与え方
コルク付けの胡蝶蘭に肥料を与える場合も、5月~9月頃の成長期にのみ肥料を与えます。
固形肥料は置けないため、液体肥料を使いましょう。
液体肥料の使い方の例は以下のとおりです。
- 肥料の分量を量り、規定の割合で希釈する
- 水やりの代わりに肥料を与える
肥料の稀釈率や与える頻度は利用する製品の説明書きに従って調整しましょう。
過剰投与が心配な場合は、稀釈率を2倍にするなどの工夫を行って肥料を与えましょう。
詳しい肥料の与え方、肥料を与える際の注意点は以下の記事で解説しているため参考にしてくださいね。
胡蝶蘭のコルク付けに失敗しないためのコツ
胡蝶蘭のコルク付けの失敗でよくあるのが、固定が甘かったケースと、付けた後に株が弱ってしまうケースです。
固定の甘さや育て方の問題であれば、以下の方法で失敗を防げる可能性があります。
- 事前にコルクの表面を削っておく
- 水苔を少し多めに使う
- 株を複数場合は同種を植える
事前にコルクの表面を削っておく
コルクは表面が凸凹しており、形が複雑なので胡蝶蘭を取り付けるのが難しい場合があります。
コルクの表面を削って凹ませておくと、その中に水苔を入れて胡蝶蘭を固定できるので作業しやすくなりますよ。
水苔を少し多めに使う
コルク付けした胡蝶蘭のよくある失敗は、水やりが足りずに水不足になってしまうパターンです。
乾燥しすぎを防ぎたい、水やりを少なくしたいなら水苔を多めに使いましょう。
コルク付けで使う水苔の量は、基本的に自由です。
水苔が少ないとコルクに根が活着しやすくなりますが、小まめな水やりが必要でお手入れが大変になるため様子を見つつ量を調節しましょう。
ただし、コルク全体が水苔で覆われている根が活着できないため、水苔を増やす際は胡蝶蘭の根の周りでボール状の苔玉を作ることを意識するといいですよ。
株を複数場合は同種を植える
コルクが大きいと、2~3株を同じコルクに付ける場合があります。
その際は、同じ育て方をしても大丈夫な株を付けるようにしましょう。
例えば、胡蝶蘭の快適な温度は18~25℃くらいですが、他の蘭にとっては温度が高すぎる場合があります。
品種によっても向いている育て方に若干違いがあるため、近しい種類の株を植えるようにしましょう。
まとめ
胡蝶蘭のコルク付けは根を空気に触れさせて育てる方法です。
インテリアとしてもお洒落で、気根を伸ばす様子が見れるため胡蝶蘭好きの方に人気がある栽培方法です。
しかし、コルク付けにはメリット・デメリットや向き不向きがあるため、植え替える前に特徴を確認しておきましょう。
胡蝶蘭をコルク付けするとしたら、花が咲き終わった4月~6月頃が最適です。
コルク付けする際に準備する道具や手順は以下のとおりです。
準備する道具 |
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手順 |
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コルク表面の形が複雑で付けにくい場合は、表面を事前に削っておくと固定しやすくなりますよ。
また、乾燥や水不足対策に水苔は少し多めに使っておくのがおすすめです。
水苔の量は後から調整できるため、一度コルク付けをして水切れなどの様子を見ながら調整するようにしましょう。