花屋を始めたい、独立したいと思っても、新しく事業を始めるにはたくさんのお金がかかるもの。「自己資金だけでは心もとない…」と不安になってしまうこともあると思います。
そんな時に役立つのが金融機関や自治体の融資制度です。
銀行での融資以外にも、国や自治体でも新規事業を始める場合に利用できる融資や支援制度が用意されており、特に初めて事業を立ち上げる個人事業主の力強い味方になってくれます。
今回は、個人事業として花屋の新規開業をしている人におすすめの資金調達方法・融資元、資金繰りに役立つ制度について紹介します。
こんな方におすすめ
- 花屋の開業にいくらぐらいの資金が必要か知りたい
- 花屋の開業資金のおすすめの調達方法・融資元を知りたい
- 資金調達に役立つ制度を知りたい
花屋の出店時に準備しておく資金の目安
資金調達方法に入る前に、まず花屋を開業する際に必要な資金の目安を見ていきましょう。
花屋の開業にかかる費用は、目安としておよそ300~500万円程度と考えておくと良いでしょう。
花屋は開業に必要なものが少ないビジネスなので、初期設備を必要最低限に絞った場合、さらに安く抑えられる可能性もあります。
以下の表に、必要な項目ごとに大まかな費用感をまとめました。
物件取得費用 | 約100~200万円 |
内装・外構工事費用 | 約100~500万円 |
什器・備品購入費用 | 約10~100万円 |
運転資金(仕入れ費・広告費など) | 約100~300万円 |
合計 | 約300~1,100万円 |
上記の金額はあくまで目安です。特に物件取得費用や、内装・外構工事費用は立地やこだわり方によって大きく費用が変わってきます。
また、広告宣伝費やスタッフの雇用を検討している場合は、さらに必要資金を多く見込んでおく必要があります。
これらの金額と準備可能な自己資金とを照らし合わせて、足りない分の資金を融資などで補っていく形になります。
いくら融資が必要かも資金調達方法の検討材料となりますので、最初に必要な額を算出しておきましょう。
開業資金の調達方法①日本政策金融公庫からの融資
花屋の開業資金が心もとないときの調達方法として、最もおすすめなのが「日本政策金融公庫」からの融資です。
日本政策金融公庫は「日本公庫」とも呼ばれ、株式会社であるものの国が株式の100%を保有する、政府公認の特別な企業です。
融資と言うと民間金融機関をイメージする方も多いと思いますが、民間金融機関からの融資は企業の規模感や財務状態についての審査が厳しく、個人事業主の開業にあたっては融資を受けられない可能性が高いです。
そんな中で個人事業主や中小・零細企業の融資をサポートをしてくれるのがこの日本政策金融公庫です。
特に「新規開業」に関して積極的に支援を行っており、個人事業主の新規開業の借入先としては最もおすすめと言えるでしょう。
日本政策金融公庫には、事業ごとに様々な融資制度が用意されています。
花屋の新規開業の場合は、「国民生活事業」の「新企業育成貸付(新規事業開業資金)」が該当します。さらに対象者の条件によって、特別利率が適用されることもあります。
新規事業の立ち上げの際は、無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」の適用も可能です。
デメリットとして融資上限額が3,000万円まで下がる・利率が高くなるという点はありますが、開業へのハードルをぐっと下げてくれます。
女性・若者・シニアを対象にした特別利率も設定されているため、女性に人気の花屋開業には頼もしい存在になってくれるでしょう。
「新規事業開業資金」詳細まとめ
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) ※新創業融資制度を利用の場合、3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
自己資金 | 借入金額の10分の1以上 |
返済期間 | 【設備資金】20年以内(うち据置期間2年以内) 【運転資金】7年以内(うち据置期間2年以内) |
利率(年) | 【担保不要の場合】[基準利率] 2.01~2.80% / [特別利率A] 1.61~2.40% 【新創業融資制度】[基準利率] 2.31~3.10% / [特別利率A] 1.91~2.70% 【担保ありの場合】[基準利率] 1.06~2.45% / [特別利率A] 0.66~2.05% ※女性・35歳未満・55歳以上の場合などに特別利率Aが適用。その他にも条件あり。 |
担保・保証人 | 無担保OK。詳細は要相談 |
(参考:【日本政策金融公庫】新規開業資金の案内)
開業資金の調達方法②信用金庫からの融資
新規事業を始めるにあたって民間の銀行からの融資を受けるのは難しいですが、信用金庫では創業支援の融資を行っているところも多数あります。
借り入れという面だけを見ると、開業時には日本政策金融公庫の方が利用しやすい場合が多いです。
信用金庫は全体的に融資限度額がやや低めで、金利が銀行よりも高めに設定されています。また、審査に信用保証協会を利用する必要があるため、時間がかかりがちという難点もあります。
しかし信用金庫ならではのメリットとして、地域密着型という点が挙げられます。
地元とのつながりが強いため地方自治体の制度に詳しく、また創業を目指しているような個人事業主にも比較的親身になって対応してくれます。
長期的な付き合いも視野に入れるなら、信用金庫が選択肢として挙がってきます。
また、日本政策金融公庫と信用金庫の両方から融資を受けるということも可能です。
資金が必要な際は検討してみてはいかがでしょうか。
花屋の開業資金調達に役立つ自治体の制度
融資以外にも、開業時の資金調達に役立つ制度が自治体ごとに用意されています。ここではその一例を紹介します。
信用保証協会の制度融資
「信用保証協会」とは、簡単に言うと実績のない事業者が融資を受ける際に連帯保証人になってくれる公的機関です。
創業直後の企業は、企業としての信用がゼロの状態でのスタートとなりますので、通常であれば民間の銀行などの審査が通らず融資を受けることができない、という状態になりかねません。
そこで事業者の代わりに債務を保証し、金融機関からの融資を受けやすくしてくれるのが信用保証協会です。
もし仮に倒産して返済が困難になった場合も、信用保証協会が肩代わりして返済してくれるという仕組みになっています。
新規事業を始める際は、前述の「信用金庫」の審査を受ける際などに利用することが多いです。
信用保証協会からの連帯保証を受けるには、「保証料」を支払う必要があります。年率は保証を受ける企業の財務内容等により決まりますが、おおまかには保証額の0.5%〜2.5%程度となる場合が多いです。
支払いの方法としては、「数年の返済期間にかかる保証料を融資時に一括で支払う」「毎月銀行金利とまとめて支払う」のいずれかを選択できます。
助成金・創業補助金
各自治体では、地域の活性化のために新規事業の立ち上げを考えている人の支援を行っていることが多く、開業時に創業補助金や助成金が出る場合があります。
助成金の最大のメリットは、後から返済しなければならない融資と違って返済の必要がないという点です。
デメリットがないため、自治体が提示する条件に当てはまるならぜひとも利用したい制度です。
他に融資と異なる点としては、融資は先に借りて後で返す方式ですが、助成金は開業後に受け取るというタイミングの違いが挙げられます。
開業時、どうしても手持ちがない分は融資で補い、同時に助成金の申請をしておくのが良いでしょう。
自治体が設けている助成金はいくつか種類があり、自治体ごとに異なります。
また、各助成金の受給を受けるには条件があり、事前に審査が必要です。準備段階から審査が必要な場合もありますので、開業を検討し始めたら助成金も視野に入れ、早めに準備しておきましょう。
花屋におすすめの助成金・補助金【3選】給付額や受給条件も徹底解説
開業時の借入先の選択は慎重に!
花屋の開業資金調達におすすめの方法として、「日本政策金融公庫」「信用金庫」、その他自治体の制度を紹介してきました。
ここで紹介した以外にも、花屋の開業時に資金を調達するための方法はいくつもあります。
例えば、ここ数年で利用者が増えているクラウドファンディングや、審査のハードルが低い消費者金融なども選択肢としては存在します。
ただし、これらは気軽に手を出せてしまう分、特に責任が問われます。
クラウドファンディングは一見気軽ですが、今後の事業計画がはっきりしていないと信用を得られず、資金が集まりづらいです。目標金額が達成できた場合もリターン対応が不十分だと、クレーム・炎上に発展するリスクがあります。
そもそも事業に目新しさがないと注目されず集まりづらいため、花屋にはあまり適していないと考えられます。
消費者金融は審査が甘く借りやすいですが、金利が高く、うまく資金繰りが出来ないといつまでも返済が終わらないという事態になりかねません。
また、借入金額が多いと今後別のローンなどの審査に差し支える可能性も出てきます。
消費者金融は一時的な借り入れに使うためのものなので、長期的に事業としてお店を続けていくことを考えるなら利用しない方が良いでしょう。
開業資金としての融資なら、政府が提供する制度を利用する方が社会的な信頼も得られますし、困った時も自治体や信用金庫に相談できます。
この「社会的信頼」は、事業を長く続ける上で重要になってきます。花屋と言っても一つのビジネスであるということを考えて、融資の選択は慎重に行いましょう。