胡蝶蘭の育て方

胡蝶蘭に寄生した害虫を駆除する方法は?被害を受けないための対策方法も解説

胡蝶蘭に寄生する害虫 駆除方法・対策を解説

Bloom Note編集部

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この記事はこんな人におすすめ

  • 胡蝶蘭についている虫が何かを知りたい
  • 胡蝶蘭に発生した害虫の駆除方法を知りたい
  • 胡蝶蘭に害虫が発生しないように対策したい

胡蝶蘭は、寿命が長く、お手入れもあまり必要としない植物です。
しかし、いつの間にか胡蝶蘭が害虫の被害を受けているということもあります。

害虫は胡蝶蘭の株や葉を痛めたり開花を妨げる原因となるため、早めの対策が求められます。

この記事では、胡蝶蘭に寄生する害虫駆除方法についてご紹介します。
胡蝶蘭が害虫の被害を受けないための対策方法も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

胡蝶蘭に寄生する害虫とその駆除方法

害虫被害から胡蝶蘭を守るためには、見つけ次第早めに駆除しなければいけません。
胡蝶蘭に寄生する害虫には、以下のようなものがあります。

  • カイガラムシ
  • コナカイガラムシ
  • ハダニシ
  • コナダニ
  • スリップス(アザミウマ)
  • アブラムシ
  • ナメクジ
  • コバエ
  • アリ

害虫によって有効な薬剤などが異なるため、それぞれの害虫の特徴や駆除方法について詳しく解説します。

カイガラムシ

カイガラムシ

カイガラムシは、茶色や白くて丸い見た目をした害虫です。
カイガラムシが寄生した場合の症状は以下のとおりです。

  • 花や葉の養分を吸い取る
  • 生長が遅れる
  • 葉を腐らせ、放置すると枯れる
  • 排泄物の上ですす病を繁殖して葉が黒くなる

小さい貝殻みたいな硬い殻を覆い、胡蝶蘭の養分や水分を吸い取ります。

樹木から風で飛んできたり、外部から持ち込んだ植物などに付着していることが多いです。
一度発生すると、一回では駆除できないため、非常に厄介です。

カイガラムシの駆除方法

カイガラムシの駆除は以下の手順で行います。

  1. 歯ブラシや綿棒などで取り除く
  2. 薬剤を散布する
  3. 2週間に1回程度、薬剤散布を続ける

カイガラムシを見つけたら、卵はすぐに取れるので、歯ブラシや綿棒などを使ってひとつずつ取り除きます
成虫の場合は、胡蝶蘭を傷つけないように、つまようじなどでゆっくり剥がしていきましょう。

最後に目に見えない幼虫などを駆除するために、薬剤を散布します。
カイガラムシの駆除に有効な薬剤は、以下の2つです。

  • スプラサイド
  • オリオン
  • カイガラムシエアゾール

カイガラムシは一度の駆除で根絶させるのは難しいため、一度発生したら2週間に1回ほどの頻度で継続しましょう。

コナカイガラムシ

コナカイガラムシ

コナカイガラムシは、カイガラムシの一種で、白いふわふわの綿みたいなものを付けています。
カイガラムシと同様に以下の被害を胡蝶蘭に与えます。

  • 花や葉の養分を吸い取る
  • 生長が遅れる
  • 葉の表面がベタベタする
  • 排泄物の上ですす病を繁殖して葉が黒くなる

カイガラムシ同様に、一度では駆除できません
また、増殖スピードが早く、次々増えて周りの鉢にも移動するため早期発見と対策が必要です。

コナカイガラムシの駆除方法

コナカイガラムシの駆除方法はカイガラムシ同様に以下のとおりです。

  1. 歯ブラシや綿棒などで取り除く
  2. 薬剤を散布する
  3. 2週間に1回程度、薬剤散布を続ける

コナカイガラムシが多すぎて取り除くのが大変な場合は、薬剤を散布する方が効果的です。
コナカイガラムシの駆除に有効な薬剤は、以下のとおりです。

  • オリオン
  • カイガラムシエアゾール

ハダニ

ハダニ

ハダニは、体長0.3mm〜0.5mmと小さく、赤色をした害虫です。
胡蝶蘭に及ぼす影響は以下のとおりです。

  • 葉の裏から養分を吸い取る
  • 葉がベタベタしたり変色する

名前の通り、胡蝶蘭の葉に付くダニで、葉の水分や養分を吸い取ります。
ハダニが発生すると、葉がべたべたしたり、変色を起こすなど、株が弱り最悪枯れる原因となります。

発生時期は主に高温で乾燥した時期の梅雨明けから8月ですが、胡蝶蘭の適温とハダニが好む温度が似ていることから年中発生する可能性があります。

ハダニの駆除方法

ハダニの駆除する際の手順は以下のとりです。

  1. 霧吹きで水をかける
  2. いなくならない場合は薬剤を散布する
  3. 複数の薬剤を順番に散布する

ハダニは乾燥している場所を好むため、霧吹きで水をかけることで追い払うことができます。
水をかけても追い払えない場合は、薬剤を散布して駆除しましょう。
ハダニに有効的な薬剤は、以下の2つです。

  • ケルセン乳剤
  • テルスター

ハダニは、薬剤の抗体ができるため、同じ薬剤を続けて使うと次第に効き目が弱くなります。
そのため、薬剤の種類を順番に変えながら駆除しましょう。

コナダニ

コナダニ

コナダニはハダニとは違い、湿度が高く暗い所に寄生するダニです。
コナダニが胡蝶蘭に寄生すると以下のような症状が現れます。

  • 胡蝶蘭の花が1輪だけしおれる

胡蝶蘭に寄生することは少ないのですが、水苔やバークなどの有機物の中に発生します。
花が1輪だけでしおれてしまった場合は、コナダニの発生を疑ってみましょう。

コナダニの駆除方法

コナダニは目視での発見が難しいため、薬剤による駆除が一般的です。
コナダニの駆除に有効な薬剤は、以下の2つです。

  • ケルセン乳剤
  • ペンタック

またコナダニは、有機物の中に発生しやすいため、有機物の肥料は使わずに適切な環境で育てることで発生を防げます。

アザミウマ(スリップス)

アザミウマ(スリップス)

アザミウマは、スリップスとも呼ばれることのある害虫で、体長1mm~2mmの細長い形をしています。
アザミウマは胡蝶蘭に以下の影響を及ぼします。

  • 蕾や花びらに寄生して吸汁する
  • 花びらのふちが黄色く変色する
  • 花が奇形になり咲かなくなる

胡蝶蘭の新芽や新葉、花などを吸汁し、葉や花を奇形にしたり変色させたりします。

少し暖かくなり始める4月中旬あたりから、11月にかけて発生します。

アザミウマ(スリップス)の駆除方法

アザミウマ(スリップス)は花や蕾に寄生することが多いため薬剤による駆除となります。
有効な薬剤は、以下のとおりです。

  • オリオン
  • アドマイヤー
  • アセフェート水和剤(オルトラン)

アブラムシ

アブラムシ

アブラムシは4月〜11月に発生しやすく、主に外部から飛んできて胡蝶蘭に寄生します。
胡蝶蘭に与える影響には以下のような例があります。

  • 葉、花、茎の全て箇所から栄養分を吸い取る
  • 花や蕾が黄色くなり萎れる
  • モザイク病などのウィルス性の病気を媒介する
  • 排泄物の上ですす病を繁殖して葉が黒くなる

胡蝶蘭の花や葉、蕾、花茎の先端に寄生して、蕾が落ちたり花が開かないなどの被害が発生します。

アブラムシの駆除方法

アブラムシの駆除する際は薬剤を散布するのがおすすめです。
有効な薬剤は、以下の3種類です。

  • オリオン
  • テルスター
  • マドマイヤー

またアブラムシの対策としては、アルミホイルを鉢の下に敷いておいたり、水で薄めた牛乳を吹きかけたりする方法も効果的です。

アブラムシに薄めた牛乳が効くのは本当?

薄めた牛乳を散布すると、乾燥時にアブラムシの呼吸口が塞がって窒息するため駆除することができます。

ただし、牛乳を乾かした際の臭いなどが残るため、駆除後に葉水などで洗い落とす必要があります。
また、アブラムシが大量発生した場合は駆除が追い付かないため薬剤を散布する方が効果的です。

ナメクジ

ナメクジ

胡蝶蘭を屋外で育てている場合、特に梅雨時期にナメクジの被害を受ける可能性が高いです。
葉や根、新芽などを食べてしまいます。

根腐れしているとナメクジが発生しやすくなるので注意が必要です。

ナメクジの駆除方法

ナメクジの駆除には、薬剤を散布するのが有効です。
有効な薬剤は、以下の2種類です。

  • マイキラー
  • アクテリック乳剤

またナメクジは、鉢植えの周りに銅板や胴線などを設置しておくと予防になります。
ナメクジは銅イオンを避けるため、銅板を下に置く、同線で鉢を囲むと鉢底への侵入を防げます。

コバエ

コバエ

胡蝶蘭に限らず、水やりのしすぎなどで根が腐っていたり、受け皿に水が溜まったりすると、コバエが発生しやすくなります。

植物に発生しやすいコバエの種類には、以下の2種類がいます。

  • 水の中に卵を産み付けるチョウバエ類
  • 土の中に卵を産み付けるキノコバエ類

コバエは胡蝶蘭に害を与えないことが多いですが、一部のコバエは蕾を傷付けることがあるので、見つけたら早めに駆除しましょう。

コバエの駆除方法

コバエを駆除するには、鉢周りの環境を改善する必要があります。
以下のように多湿な環境になっている場合は早急に見直しましょう。

  • 水の与えすぎで悪くなった植え込み材
  • 水が溜まった受け皿

また、胡蝶蘭が根腐れを起こしている場合は、植え替えするのがおすすめです。

アリ

アリ

胡蝶蘭は、葉の裏から液が出ることがあるのですが、その液にアリが集まることがあります。
アリは葉の裏から出る成分を吸うだけでなく、胡蝶蘭の根元に巣を作ることがあり、放置しておくとどんどん胡蝶蘭の成分を吸ってしまうため、衰弱の原因となります。

アリの駆除方法

アリの駆除方法は以下の手順となります。

  1. 水に殺虫剤「マラソン」を溶かして鉢を浸ける
  2. 2~3日薬剤を使用する

鉢の周りでアリをよく見る場合は、鉢の中に巣を作っている可能性があります。
その場合は、「マラソン」を水に溶かした中に鉢を浸けるという作業を2日〜3日続けることで駆除しましょう。

また薬剤で巣を根絶させるのは手間がかかるので、思い切って植え替えするのもひとつの手です。

胡蝶蘭の害虫駆除に使ってはいけない薬剤

胡蝶蘭に使ってはいけない薬剤

胡蝶蘭の駆除に使う薬剤ですが、なかには使うことで胡蝶蘭を弱らせる原因となる薬剤もあるため注意が必要です。

胡蝶蘭にとって害となる薬剤には、以下の4つがあります。

  • プロピレングリコール(PG表記)
  • 石灰硫黄合剤・マシン油乳剤
  • オルトラン水和剤

それぞれの薬剤を使ってはいけない理由を解説していきます。

プロピレングリコール(PG表記)

プロピレングリコールは、「PG」と表示されることもある薬剤で、シャンプーや化粧品、歯磨き粉などさまざまな製品に含まれています。

カイガラムシを駆除する際に、水で薄めた中性洗剤を使って株を洗う場合があるかもしれません。
しかし、胡蝶蘭には有害となるため、使用する場合はプロピレングリコールが含まれていない中性洗剤を選びましょう。

石灰硫黄合剤・マシン油乳剤

「石灰硫黄合剤」と「マシン油乳剤」はカイガラムシの駆除に効果がある薬剤ですが、胡蝶蘭には強すぎて薬害となるため、胡蝶蘭が枯れる原因となります。

薬剤を購入する際は、胡蝶蘭に使えるかを確認したうえで選びましょう。

オルトラン水和剤

オルトラン水和剤は、アザミウマ(スリップス)を駆除するのに有効な薬剤ですが、胡蝶蘭には刺激が強すぎるため使ってはいけません。
最悪、胡蝶蘭が枯れてしまう可能性もあります。

胡蝶蘭が害虫の被害を受けないための対策方法

害虫被害を防ぐ5つのポイント

胡蝶蘭が害虫の被害を受けないための対策方法には、以下のようなものがあります。

  • 木酢液を撒く
  • 胡蝶蘭の適温で管理する
  • 葉が乾燥しないように気を付ける
  • 風通りの良い日陰に置く
  • 水やりを適切に行う

害虫に寄生されると駆除に手間がかかるため、害虫対策をしておくのもおすすめです。
また、駆除後に再び害虫被害を受けないためにも、定期的に対策しておくことが大切です。

木酢液を撒く

木酢液とは、木炭や竹炭を焼く際に発生する煙や水蒸気を冷やして液体にしたものです。
ネット通販やホームセンターなどで入手できます。

木酢液に含まれるアルコールや酢酸には、菌の繁殖を抑える効果があるとされていて、胡蝶蘭の害虫対策にも効果が期待できます。

木酢液は原液のまま使うと強すぎるので、使用する際は薄めて使用します。
害虫対策や植物の抵抗力を高めたいなら、200倍〜500倍に薄めて使うと良いでしょう。

胡蝶蘭の適温で管理する

育成するのに適温でないと胡蝶蘭が弱ってしまい、抵抗力が弱まるため、害虫の被害を受けやすくなります。
胡蝶蘭は、約18℃~25℃の適温が保てる場所で管理するようにしましょう。

できれば温度差の少ない室内で育てることで、元気に育ちます。

葉が乾燥しないように気を付ける

高温で乾燥した場所を好む害虫が多いため、害虫対策には胡蝶蘭の葉が乾燥しないように気を付けることが大切です。

葉が乾燥しないように、こまめに葉水を行いましょう。
特に冬は乾燥しやすいので注意が必要です。

また室内で育てる場合は、エアコンの風が胡蝶蘭の葉に直接当たると乾燥してしまうため、風が直接当たらない場所に置きましょう。

胡蝶蘭の葉が乾燥しないように管理することは、害虫対策になるのはもちろん、胡蝶蘭が元気に育つためにも重要です。

風通りの良い日陰に置く

胡蝶蘭の適切な生育環境は、風通しの良い明るい日陰です。
胡蝶蘭が元気に育つと、抵抗力も強まるため、害虫対策にもつながります。

適切な水やりを行っていても、風通しが悪い場所だと多湿となってしまうため、風通しの良い場所で育てるのがおすすめです。

胡蝶蘭は夏と冬以外なら屋外でも育てられますが、直射日光に当てるのは良くないので、明るい日陰に置きましょう。
また屋外の場合、湿度が高い梅雨時期は、ナメクジの発生に注意が必要です。

水やりを適切に行う

害虫の発生だけでなく、胡蝶蘭自身のためにも、水の与えすぎや水不足は良くありません。
季節によって水やりのタイミングは異なりますが、目安は以下のとおりです。

季節 目安頻度
1週間~10日に1回
2~3日に1回
10日~2週間に1回
2週間~1か月に1回

胡蝶蘭の水やりは、植え込み材が完全に乾いてからたっぷりの水を与えます。
適切なタイミングに適量の水やりを行い、受け皿に溜まった水はすぐに捨てることが大切です。

水が多くても少なくても良くないので、胡蝶蘭や水苔などの状態をこまめに観察して水を与えましょう。

まとめ

胡蝶蘭に発生する主な害虫と有効な薬剤は、以下のとおりです。

害虫名 特徴 有効な薬剤
カイガラムシ
  • 白くてふわふわした見た目
  • 一度で駆除できないる
  • スプラサイド
  • オリオン
コナカイガラムシ
  • カイガラムシの一種
  • 白いふわふわの綿みたいなものが付いている
  • オリオン
ハダニ
  • 体長0.3mm~0.5mmで、赤いダニ
  • 高温で乾燥した場所を好む
  • ケルセン乳剤
  • テルスター
コナダニ
  • 湿度が高く暗い場所を好む
  • 有機物の中に発生する
  • ケルセン乳剤
  • ペンタック
アザミウマ
(スリップス)
  • 体長1mm~2mmの細長い形
  • 4月中旬あたり~11月に発生する
  • オリオン
  • アドマイヤー
  • アセフェート水和剤(オルトラン)
アブラムシ
  • 4月~11月に発生する
  • オリオン
  • テルスター
  • マドマイヤー
ナメクジ
  • 梅雨時期に発生しやすい
  • マイキラー
  • アクテリック乳剤
コバエ
  • 胡蝶蘭に無害なことが多いが、衛生的に問題がある
  • 根腐れや水に寄ってくる
なし
アリ
  • 葉の裏から出る成分を吸う
  • 根元に巣を作ることもある
  • マラソン

害虫が発生すると、胡蝶蘭の花や葉に異常や変色を起こしたり、株を弱らせて枯らしてしまいます。
そのため、見つけたら早急に対策する必要があります。

ただし害虫によって駆除方法が異なったり、薬剤によっては胡蝶蘭には使ってはいけないものがあるため、正しい害虫の駆除方法を知っておくことが大切です。

また胡蝶蘭を害虫から守るために日頃から対策しておくと、害虫被害に悩まされる可能性が高くなります。
胡蝶蘭が害虫の被害を受けないためには、以下の対策方法が有効です。

  • 木酢液を撒く
  • 胡蝶蘭の適温で管理する
  • 葉が乾燥しないように気を付ける
  • 風通りの良い日陰に置く
  • 水やりを適切に行う

害虫対策をしっかりと行って、元気な胡蝶蘭を育ててください。

-胡蝶蘭の育て方