この記事はこんな人におすすめ
- 胡蝶蘭が身体に悪いという噂が本当か知りたい
- 胡蝶蘭を寝室に置いても大丈夫か気になる
- 胡蝶蘭の光合成や呼吸について知りたい
「胡蝶蘭は身体に悪い」「大量に置くと二酸化炭素を排出して酸欠になる」などの悪い噂がありますが、根拠がなく、正しい情報ではありません。
胡蝶蘭は毒性もなければ、寝室に大量に置いたとしても酸欠になることはありません。
この記事では胡蝶蘭に関する噂の真相について解説します。
胡蝶蘭の光合成と呼吸の仕組みや、夜間に呼吸で出される二酸化炭素排出量についても紹介しています。
胡蝶蘭で酸欠になる噂はでたらめ
胡蝶蘭には以下のような噂がありますが、全て根拠のない都市伝説です。
- 胡蝶蘭は毒性がある
- 胡蝶蘭は身体に悪い
- 夜間に胡蝶蘭が原因で酸欠になる
- 大量の胡蝶蘭を置いて死亡した例がある
胡蝶蘭は人体に有害なガスを排出することはありませんし、毒性自体がありません。
「大量の胡蝶蘭を閉め切った室内に置いたせいで酸欠になって死亡した例がある」という噂についても情報源は不明です。
また、胡蝶蘭が呼吸をして二酸化炭素を排出しているのは事実ですが、人間の体調に影響を与えるレベルではありません。
人の呼吸で排出される二酸化炭素の量と比べれば、植物の出す二酸化炭素量は極めて微量です。
寝室にユリを置くと眠るように亡くなるという話も、根拠がない噂話です。
胡蝶蘭の悪い噂が広まった3つの原因
胡蝶蘭に関する噂はデマだと言われても、よく聞く話ですので「本当に嘘なのかな?」と思ってしまう方もいらっしゃると思います。
胡蝶蘭の噂が広がった理由は、以下の3つの要因によって誤解が生まれたことだと考えられます。
- 夜間も呼吸をして二酸化炭素を出す
- 胡蝶蘭は夜間に気孔が開く
- 二酸化炭素濃度が高いと酸欠になる
胡蝶蘭に限らず、植物は昼夜を問わず呼吸をして二酸化炭素を吐き出しています。
また、胡蝶蘭は夜間に気孔を開くCAM型光合成を行うため、「一般的な植物よりも多く二酸化炭素を出している」と誤解が生じたのでしょう。
加えて、近年の研究で締め切った部屋で寝ると人の呼吸によって二酸化炭素濃度が高まり、脳が酸欠になるという結果が報告されています。
胡蝶蘭が原因ではありませんが、実際に二酸化炭素濃度が上がり体調不良を起こしていた方がいたのかもしれませんね。
- 二酸化炭素濃度の上昇で起こる体調不良
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二酸化炭素の濃度は通常で400ppm~1,000ppm程度です。
一般的な閉め切った寝室で寝ると二酸化炭素濃度は朝方には4000ppmを越えると言われており、濃度が高くなると以下のような不調が現れます。- 約1,000ppm:気分が悪くなる人がいる
- 約3,000ppm:集中力が低下する
- 約4,000ppm:頭痛やめまい、吐き気を催すことがある
- 約6,000ppm:頭痛やめまい、過呼吸になる人もいる
二酸化炭素濃度を上げないようにするためには、換気を行うことが有効です。
窓を開けられない場合は、換気機能付きの空調機を利用するなどの対策を行いましょう。
ここからは、胡蝶蘭の光合成と呼吸の仕組みについて確認していきましょう。
胡蝶蘭のCAM型光合成の特徴
CAM型光合成は、暑い地域や乾燥地帯の植物に見られる光合成の仕組みです。
胡蝶蘭の他にもサボテンや多肉植物などが用いており、観葉植物のサンスベリアやドラセナもCAM型光合成を行います。
CAM型光合成の特徴としては、以下の2点があげられます。
- 夜間に気孔を開いて二酸化炭素を吸収する
- 昼間に光合成を行う
光合成に必要なものは「二酸化炭素、水、光」の3つとなります。
CAM型光合成を行う植物(CAM植物)は夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、翌日まで蓄えておきます。
昼間は気孔を閉じるため、夜間に蓄えた二酸化炭素を使って光合成を行います。
夜と昼の両方の時間を使い、1日かけて光合成を行うのがCAM型光合成の特徴です。
胡蝶蘭に限らず、CAM植物を育てる時は夜と昼の時間を両方作るようにしましょう。
- 夜間の二酸化炭素量が多いと胡蝶蘭の生長が良くなる場合がある
-
胡蝶蘭の育て方を調べると「夜間にビニール袋を被せて息を吹き込む」という簡易温室を作る方法が出てきます。
CAM型光合成は夜間に蓄える二酸化炭素量が増えればより多くの酸素とエネルギーを生み出せるため、胡蝶蘭の生長が良くなる場合があります。しかし、胡蝶蘭が二酸化炭素を蓄えられる量には個体差があり、日中に水と光をしっかり与えることも必要です。
どんな胡蝶蘭にも効く確実な方法ではありませんが、気になる方は以下の手順で一度試してみましょう。- 夜間は胡蝶蘭にビニール袋を被せる
- 息を吹き込んで袋を閉じる
- 朝になったらビニール袋を外す
- 普段通りに水やりを行い、半日陰に置く
一般的な植物の光合成との違い
一般的な植物の光合成とCAM型光合成の違いは以下のとおりです。
特徴 | 一般的な植物 | CAM植物 |
---|---|---|
気孔の開閉 | 昼間を問わず開く | 夜に開き、昼は閉じる |
二酸化炭素の吸収 | 昼間 | 夜間 |
二酸化炭素の貯蔵 | 行わない | 貯蔵する |
一般的な植物は、昼に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み光合成をしています。
逆に、水分を失わないために夜間は気孔が閉じ気味になっており、昼の時間だけで光合成を行います。
生育環境にもよりますが、二酸化炭素、水、光が満ちている環境であればCAM型光合成よりもエネルギーと酸素を生み出す効率が良いと言われています。
そのため、胡蝶蘭は寿命が長いけど生長するのがゆっくりな傾向があるとされています。
- 胡蝶蘭やサボテンにCAM型光合成が必要な理由
-
植物はなるべく水分を失いたくないため、必要な時以外は気孔を閉じて生活しています。
CAM植物は原産地が熱帯雨林や乾燥地帯ですので、昼間に気孔を開くと暑さや乾燥で大量の水分が蒸散してしまいます。
しかし、気孔を開かないと光合成に必要な二酸化炭素を取り込めないため、涼しい夜間に気孔をあけるCAM型光合成へと進化したと考えられています。
胡蝶蘭も常に呼吸をしている
植物も動物と同じように呼吸をしており、昼夜問わず酸素を吸収して二酸化炭素を排出しています。
胡蝶蘭は「夜間のみ呼吸を行っている」と言われていますが、実際は他の生き物と同様に常に呼吸をしています。
昼間は呼吸と同時に光合成をしているため、呼吸で出す二酸化炭素量より光合成で生み出す酸素量が多いことが理由です。
胡蝶蘭の二酸化炭素排出量は?
植物が呼吸で出す二酸化炭素量は、人間の呼吸と比べると極めて少ないことが分かっています。
胡蝶蘭の二酸化炭素排出量を調べたデータはありませんが、胡蝶蘭と同じCAM植物のサンスベリアやその他の観葉植物では様々な実験が行われています。
観葉植物で「植物の呼吸で室内の酸素はどのくらい減るの?」という実験をしたところ、高さ1mの観葉植物は人の1/200~1/100程度の酸素しか吸っていませんでした。
室内に植物を置いても、酸素・二酸化炭素量にはほとんど変化がないという結果が出ています。
また、観葉植物の空気清浄機能を調べた記事でも専門家が以下のように意見を述べています。
空気の質を左右するほどVOCを減らすには、約30センチ四方につき10本ほどの植物が必要になる。これは約45平方メートルの部屋なら5000本に相当し、森そのものという状態だ。
種類や環境によりますが、植物の呼吸と光合成の速度は「1:10~1:20」ほど違うと言われています。
光合成による空気質改善を実感するために5000本の植物が必要なら、二酸化炭素濃度を上げるためにはもっと大量の植物が必要ということになってしまいます。
上記などの理由から、胡蝶蘭の呼吸による二酸化炭素排出量も人間の1/200~1/1000程度ではないかと推定されています。
結果として呼吸で出す二酸化炭素量より、光合成のために吸収する二酸化炭素量の方が多くなる場合もあると考えられています。
まとめ
胡蝶蘭に関する以下の噂は信ぴょう性がない話だということを解説してきました。
- 胡蝶蘭は毒性がある
- 胡蝶蘭は身体に悪い
- 夜間に胡蝶蘭が原因で酸欠になる
- 大量の胡蝶蘭を置いて死亡した例がある
胡蝶蘭には毒性がなく、寝室に置いても酸欠になることはありません。
植物は昼も夜も呼吸をして二酸化炭素を出しています。
また、胡蝶蘭は夜に気孔を開くCAM型光合成を行うため、誤解が生まれたと考えられます。
しかし、植物の二酸化炭素排出量は人間の呼吸と比べるとごくわずかです。
胡蝶蘭の呼吸で出る二酸化炭素は人間の1/200~1/1000程度ではないかと推定されています。
また、胡蝶蘭は夜に光合成のために二酸化炭素を吸収しているため、場合によっては呼吸で出す二酸化炭素より多くの二酸化炭素を吸収することもあります。
胡蝶蘭をたくさん置いても悪影響を受けることはありませんので、好きな場所に胡蝶蘭を飾ってくださいね。